怪作に見せかけた快作。電車アタックをやってほしい

こんにちは、新人電車アタッカーです。今年の7月15日に、スペインのスタジオUndercodersからリリースされた電車アタック。僕はここ2週間ほどプレイしていて、先日最終ステージをクリアし、かつ全ステージ金メダル(各ステージにタイム・スコア・サブ目標が定められており、それら全てを達成すると金、うち二つを達成すると銀、一つは銅になる)を取得しました。僕にとっては2026年を代表する最高の作品と間違いなく言えるので、ここが最高!という様々な側面を紹介していきたいと思います。

電車アタックのマップ。すべてのステージで金メダル以上を取得

最初はJSRライクのバカゲーという印象でしたが、プレイしてみると見た目や音楽はもちろん、ストーリーもかなりよく、非常に練られたゲーム性となっており予想をいい意味で裏切られました。クリアにかかったのは確か7時間程度。値段もリーズナブルでライトに楽しめるゲームです。各プラットフォームで展開されていますが僕はSteam Deckでプレイしていました。やりたい時にパッとできるというのはもちろん、スティックが小さいためトリックがしやすいという優位性があることに後で気づきました(この記事のスクショを撮るためにXboxのコントローラーでやったら結構やりづらかった)。

ジェットセットラジオとその精神的後継作たち

僕は中学生〜高校生の頃ソニックシリーズが大好きで、Twitterでも主にソニッククラスタの人たちと交流をしていました。ソニッククラスタの方々には他のセガのゲームへの愛が強い人も多く、その中でいわゆるドリームキャストの黄金期のゲーム、ジェットセットラジオやスペースチャンネル5、セガガガなどを知ることになりました。その後、セガが旧タイトルをスマートフォンアプリや最新プラットフォームでリリースしてくれたため、自分もスマートフォンでジェットセットラジオ(以下JSR)をプレイし、Xbox 360でスペースチャンネル5 パート2やジェットセットラジオフューチャー(以下JSRF)をプレイすることができました。

特に、元々グラフィティなどが好きだったのもあり、JSRというゲームの雰囲気や世界に惹き込まれていきました。すべての収集要素を集める程度にはプレイし、そしてやはり長沼英樹さんをはじめとしたコンポーザーによる音楽にも虜になり、なんなら今でも作業中などに聞いています。

その後JSRの後継作はコンセプトなどが出ることはあってもリリースはされておらず、シリーズが終わってから知ったファンとしては悲しかったのですが、同じようにJSRの世界に虜になった人々がいわゆる「精神的後継作」を作っていることを知りました。というのもJSRにおいてやはり音楽というのはゲームのコンセプト的にも大事な要素で、精神的後継作を作っているスタジオはメインの曲を長沼さんに依頼しているんですよね。長沼さんの他タイトルの曲なども聞くようになっていた自分は、新曲のリリースを通じてHover Revolt of GamersやTeam ReptileのLethal League Blaze、Bomb Rush Cyberfunkもプレイするようになりました。

異端児、電車アタックとの出会い

一方で、電車アタックに長沼さんの曲はありません。電車アタック自体はNintendo Directや流れてきたツイートで見てはいましたが、プレイは考えていませんでした。ただ、Bomb Rush Cyberfunkのサウンドトラックを通じて他のアーティストも聞くようになった中で、JSRに強く影響を受けているであろうコンポーザーの2 Mello氏が電車アタックに曲を提供していることを知り、動画の裏で流れているゲーム映像もなかなか楽しそうだったので軽い気持ちでプレイしてみることにしました。

実際やってみて感じるのは、このゲームがJSRの精神的後継作かと言われるとだいぶ怪しいというか、異端児だな…と。JSRやJSRFという原点に対して、Hoverは多層的な空間とHoverheatというジャンプに焦点を当てたゲーム性が新鮮でした(プレイしたのが10年近く前なのであんまり覚えてないですが)。Lethal League BlazeはJSRをインスパイアしたグラフィックにスマブラとバスケを掛け合わせたようなゲーム性が面白く、Bomb Rush Cyberfunkは純粋な世界観やゲーム性を引き継ぎアップデートさせながらも、舞台やストーリーに自分たちのホームであるオランダ、ヨーロッパを反映し拡張しています。

一方で電車アタックはというと、JSR、特にJSRFの様々な要素からグラインドやトリックの気持ちよさだけを抽出し、それを極めたようなゲームだと思います。JSRやBRCにもスコアの要素はありますがあくまでおまけになっている一方、トリックを決める気持ちよさと、リスクをとりながらスコアを突き詰めていくスリルをゲーム性のメインに捉えていて全くの別物です。Wikipediaにはディレクターが影響を受けたゲームがいくつか列挙されていますが(僕は知らないゲームでした)それらの影響を強く受けているのかなと思います。

電車アタックの良さみ

さて、実際に電車アタック、ここが良いんすよという話をしていけたらと。主に分けるならば世界観、ゲーム性、音楽になるでしょう。順に説明していきます。

世界観

電車アタックの世界は近未来の日本、気候災害で世界は荒れ果て、多くの市民は浄化されたドーム型都市の中で住んでいる一方、残された人々はドーム外の荒廃した土地に住んでいます(とはいえ世界は再生しつつあり、思ったよりもちゃんと生活できてる感はあります)。ドームの建設は未来道という企業が担っており、もはや政府のような状態。今もドームの建設を進めており、ドーム間の移動は未来道が運営するVACTRAINという都市間高速列車でしかできません。

主人公の絵美はドームの外で祖母のラーメン配達を電車を使って手伝っているのですが、その最中でフェルナンド(フェル)に出会い、電車の扱いに才能を見出されて、ドーム外で流行っているエクストリームスポーツである電車アタックに誘われる……というのがプロローグ。最初に聞いた時は火の鳥の未来編だなと思いましたが、あれは地下世界だし世界に5箇所くらいしか残ってないのでそれに比べればだいぶマシですね。

巨大な企業が国を牛耳っていて、最終的に立ち向かっていくという構図はよくある設定ではあると思いますが、やはりJSRと近い構図になっていて嬉しいですね。そしてこの世界でいいなと思うのは、JSRとJSRFのような「架空のイメージとしての未来日本」ではなく、現実から地続きの日本を描いてくれているところです。BRCでも舞台はニューアムステルダムという都市ですが、現実とのつながりはなかったと思います。ゲームにおいては、九州の別府から始まり徐々に日本を北上していくのですが、そこには日本の地方があり、都市があり、そこを電車で走り抜けていく。これは電車をテーマにしている妙でもありますね。また、グラフィックはもちろんトゥーンレンダリング(JSR風に言うならマンガディメンション)です。

トゥーンレンダリングの世界。ちなみにキャラクターのモデルもあるが拡大されることはない

作者の溢れる日本愛と文化のリスペクト

そして、前述の通りこのゲームは九州から始まるのですが、各地方(九州、中国、四国、近畿、etc)は「組」によって仕切られています。そしてその組もしっかり日本に根ざしているチームで面白い。九州はギャル、中国はスケバン野球チーム、四国はロカビリーの中高年、近畿は暴走族などなど。そして日本各地を回ることになり、ステージもしっかり何県か表示されます。そして地方特有の観光名所もたっぷり出てきます。富士山や鳥取砂丘みたいな有名どころはもちろん、京都五山の送り火を灯したり、長野のアルプスを走ったり。ちなみに、僕の地元岐阜はやはり白川郷でした。ステージ内でも、地域に関連した収集物を集めるサブ目標や地域の行事を行うミッションなどがあります。

最初の地域で出会うギャル集団「爆イケクイーン」。しかも最初に出会うキャラはケモナーらしく、なかなか癖が強い

岐阜県エリアのステージでは白川郷を走り抜けることができる。サブ目標にクラクションを鳴らして鳥を追い払うという項目があり、なかなかの傍迷惑

また、こういったステージ単位のアクションゲームはストーリーがライトなものになりがちで、登場人物のバックグラウンドも薄くなってしまうことが多いと思います。その点電車アタックでは、だいたいのステージの始まりと終わりに会話が挟まる上ムービーも多く(しかもほぼフルボイス)、その上地方に「温泉」と「出版社」というスポットがあり、ストーリーの補完をしてくれます。温泉では登場人物の雑談を聞くことができ、キャラクターのバックグラウンドや今の心情を知ることができます(しかも温泉グラフィックまで用意されている)。出版社ではステージで集めた収集アイテムをもとにフェルが作っている「ファン雑誌」(Fanzine=より日本っぽく言うならば同人誌?)を埋めていくことができ、ここではライバルたちの素性や使ってる車両を知ることができる他、地方の文化やその地方のおすすめのラーメンなどのコーナーも用意されています。しかも、地方ごとにキャラクターのアートスタイルが違うというこだわりよう。

温泉では各キャラクターのバックグラウンドや雑談を楽しむことができる

ファン雑誌ではライバルのプロフィールの他に、地域の文化なども紹介してくれる

地方ごとにアートスタイルが違うところにこだわりを感じる。ローカライズによる組版の崩れはご愛嬌

他に「城」というスポットもあり、ここではステージ内のまた別の収集アイテムで電車に貼るステッカーを買ったり、異なる性能の電車を買ったりもできるようになっています。もちろんこれらの温泉や城は実際のものと連動しています。姫路城、松本城、道後温泉などなど。ちなみに電車のカスタマイズは上述のカスタマイズのほか、プリセットの中ではありますが柄(カラーパターンの配置)を選んだりカラーパターンを変えたりできるので、お気に入りの電車を使うのも嬉しいですね。

ガレージでは城で買った電車それぞれに色や模様、ステッカーのカスタマイズが可能

そんな感じで、製作者のまっすぐな日本愛が伝わる世界になってるんですよね。Wikipedia曰くディレクターのDavid氏は相当な日本フリークで、1998年以降ほぼ毎年日本に訪れているらしいです。ゲームをやっていると正直俺より日本に詳しいだろうな…と感じさせられます。こういった、日本文化をまっすぐ取り入れるのは、逆に日本人にはできないのではないかと。たとえば女神転生とかペルソナの世界に現れる日本人の世相、人間性の仄暗さなどは日本人だからこそ描くことができるものだと思いますが、一方でここまで日本の文化、地域への愛をそのままゲームに反映するのは外から日本を見ているからこそだと思いますし、文化の盗用とはとても言えない大きなリスペクトがあるでしょう。

ゲーム性

実際のゲーム性においては、自分のプレイしてきたゲームの中だとソニックが一番近いなと思いました。特にソニックワールドアドベンチャーの昼パート、ソニックジェネレーションズあたりでしょうか。つまりは常に高速で移動しながら、細かい判断を矢継ぎ早にこなしていく感覚です。そしてその中にスケートボードゲーム的なトリック要素が入っています。

ステージ

ステージにはいくつか種類があります。最も基本的なものはゴールを目指すステージで、まあこれは単純明快ですね。レースステージは数十台の車と並走してコースを3周し、3位以内に入ることが目標となります。ステージはかなり分岐があり、かつラップごとに変化したりもするため単調にはならない作りとなっているほか、ライバルの車両にぶつかると吹っ飛ばすことができます。

目標達成ステージは少し特殊で、3–5つほどの目標が定められ、それらを達成した上でブレーキをかけ止まるとクリアとなります。各目標はそれぞれ固有のエリアがあって、共通エリアで繋がっており、そこから分岐を選んで各目標のエリアに行ける形です。目標は地域の文化に根ざしたものになっているのか個性的ですね。

目標達成ステージの例。地域に根ざした目標となっていることが多く、このステージをプレイするまで愛媛に歌舞伎があることを知らなかった

トリックステージは2分の時間制限の中で、回遊でき分岐が大量にある閉じたコースを走りひたすらトリックを決め、目標スコアを狙うステージです。このステージのみタイムによるメダル付与がありません。最後にボスステージ。各地方のボスを色々なギミックを使って打ち負かすステージです。こちらは後述。大体のステージは2分から5分程度で、ボスステージはやや長く5分ちょっとかかることが多いですね。

基本的に初見でミスらず走り切るのはなかなか難しく、反射神経と動体視力で全てをなんとかしていくというよりも何度も繰り返しながらステージを覚えていく、という側面も強いです。この辺りも、ソニックに似ている要素だと感じていますね。

シンプルながら練られた操作体系

まあ、まずは序盤・中盤のステージを録画してみたので見てください。簡単そうですよね?(僕のチャンネルにもう一つ動画が上がってますが、最終盤の超ネタバレステージなのでプレイしようと思っている方は見ないでください!)

ステージは基本的に線路で、電車は基本線路に沿って勝手に走ってくれます。また、線路が2車線3車線と横に連なっている場合はスティックを入れれば隣の車線に移動ができ、車線が離れている場合はジャンプ+スティックで移動ができます。ただ、ステージには障害物や分岐があったり、あるいは線路が途切れていることもあります。それらは適切に避けたり、ジャンプして他の線路に飛び移ったりという操作が必要です。他にも、常にバランスをとり続ける必要があり、トリックを決めることができるグラインドレール、壁を伝ってトリックを決めながら移動できる壁走り、円筒形の壁を自由に移動できるトンネル、端でジャンプしてトリックを決められるハーフパイプなど様々な道が地方ごとに開放されていきます。

また、コースによっては右側にゲージが現れ、一定以上トリックを決めてゲージがマックスになると八百万道という電車アタッカーにのみ見える虹色のルートが通れるようになります。一部の収集物やサブ目標はこの八百万道を通らないと達成できません。しかし、ゲージ自体は普通にプレイしていれば簡単に貯まるのでそこは安心してください。

そんな電車アタックの操作は非常にシンプルです。基本的に使う入力装置はたったの4つだけ、左トリガー、右トリガー、左スティック、右スティック。そう聞くと簡単そうに思えますがこれだけで十分難しい構成になっています。(一部後半のギミックは解説しません。ゲームで楽しんでください!)

左トリガーはブレーキの役割を担っており、直線で長押しすることで列車を完全に止めることができます。まあ、まずコース上でやることはないですが。主な役割はカーブにおけるドリフトで、カーブに入るたびにメーターが出てきて、トリガーを押し続けて緑の部分で離すことで加速し、スコアを得ることができます。なお、このドリフト操作を一切しないとコースアウトで衝突判定になります。単純ながらコース内にしょっちゅう現れるギミックなので、脳のリソースを圧迫する原因ですね。他には「レールを外れる」という操作全般は左トリガーを使い、ゲーム後半では別のアクションでも使ったりします。

カーブに差し掛かるとゲージが出現し、左トリガーをホールドして緑部分で離すことで加速ができる。ゲーム中で最も頻出する操作

右トリガーはジャンプの役割を担っており、短押しでジャンプするほか長押しすることでチャージジャンプも可能です。ジャンプの判定はトリガーを離した瞬間となっており、チャージはXボタンでキャンセルできます。ジャンプは途切れた線路から別の線路に飛び移る時、離れた車線に飛び移る時、あるいはシンプルに直線でジャンプしてトリックを決める時などに使います。また、ジャンプ中に左トリガーと右トリガーを同時押しすることで真下に落ちる空中ストンプも使うことができます。

左スティックは移動を司っており、車線の移動、分岐でどちらに行くか、壁走り中の上下移動、グラインドレールのバランス取りなどに使います。また、着地時に前もしくは後ろに倒すことで後述の重要な要素であるマニュアルを行うことができます。一方の右スティックはトリックを入れる時に使い、ジャンプ台などで空中に浮いている間は基本的に右スティックを決まった軌道で動かすことでトリックを決めることができます。着地までに猶予があればトリックを連続して行ってコンボを紡ぐこともできるほか、グラインドレールや壁走りなどでも単純なトリックが行えます。

他にAボタンはアクセルに、右スティック押し込みはクラクションに使いますが、アクセルは基本スタートの時だけ、クラクションもサブ目標達成のためのギミックにしか使わないためおまけといったところです。

トリックとコンボとマニュアル

トリックは4つのランクに分かれており、スティックの軌道が複雑なほど高い得点が入ります。一番簡単なトリックはスティックをただ横に倒すだけで成立しますし、適当にスティックをガチャガチャしても何らかのトリックにはなります。入力方法は若干JSRやBRCっぽさがありますね。

それならマスタートリックを1つだけ覚えてそれを使い回せばいいじゃん…と考えたくなりますがもちろん対策済みで、同じトリックを繰り返していくとどんどん点数が減っていく「トリック弱化」という仕組みがあり、高得点を狙うにはさまざまなトリックを使い分けなければいけません。ちなみに僕の方法としては、このトリック弱化は直近8個のトリックを記憶する仕組みなので画像の「Front/Back 180 Impossible」「Front/Back 180 Cancel Kick/Heel」「Finger Cancel Kick/Heel 180」「Finger Cancel Kick/Heel」をひたすら順番にループさせていました。ただ、コースが複雑だと今どのトリックを行ったか忘れてしまうので、他のマスタートリックもいくつか覚え、それらを混ぜることでトリック弱化が起きないようにしています。

空中で行えるトリックはトリック辞典にまとめられている。高得点を目指すためには高難度トリックを覚えていくのが必須

そして、空中でトリックを続けていくとコンボとなり、グラインドレールや壁走りなど通常の線路にいない間はコンボが継続します。線路に着地するとコンボが終了し、コンボ中に稼いだトリックの合計点×コンボ数の10の位+1がスコアとして加算されます。例えば空中に浮いている間に500点のトリックを12回行って着地したら、(500×12)×2で12,000点入るわけですね(多分)。実際にはもっと細かく点数が入るのでそんなに単純ではないですが、とにかくコンボ数を稼いで倍率を高めていくことが高得点を狙うコツになります。

しかし、線路に着地するたびにコンボが途切れてしまうと到底60コンボや100コンボまで繋いで高得点を狙うことはできません。そこで使うことになるテクニックが「マニュアル」で、線路への着地時に左スティックを前もしくは後ろに倒すことでバイクのウィリーのように電車の頭もしくは尻を浮かせてコンボを継続させられます。そのため、マニュアルは必須テクニックとなっており左スティックを忙しくする要因の一つでもあります。マニュアルはこのゲームのゲーム性の根幹とも言えるシステムだと思っているので、リスクリターンの項で後述します。

ステージの目標と衝突(コースアウト)

ステージにはスコア、タイム、サブ目標と収集物という3つの目標が設定されています。それらのクリア状況に応じて、ステージをクリアするとランクが付きます。3つとも達成していれば金、1つ欠けていたら銀…という形で、段階としてはランクなし、銅、銀、金となっています(金を達成した状態でめちゃ高いスコアを取るとプラチナというランクもあります。隠し要素的な)。

ステージのクリア画面。今回のランでのスコア、タイム、サブ目標のクリア状況が表示される

ただ、電車アタックはかなり優しい仕様で金メダルを取るのは難しくはありません。スコアにタイムは関連してない上、最終的なメダルは「今回のランの評価」ではなく「これまでのランの最も高いスコア」が採用されるからです。つまりはスコアだけ狙ってサブ目標を全て無視してトリックに専念して走り、次のランではミスしまくっても収集物を集め、その次ではタイムを狙って一切トリックを行わずランに集中する、というプレイングもできるわけです。ちなみにメダルは基本的に自己満足要素で、途中に今までの金メダル数が足りないと進めない、みたいなものはありません。そのためサブ目標とかを全部無視してストーリーを進めていくことも可能ではあります。

また、線路が途切れるのに飛び移りそびれる、壁にぶつかる、カーブを曲がり損ねるといったミスをしてコースを逸れると衝突となり、途中からやり直しになります。当然タイムも落ちますし、コンボも途切れるため良いスコアを狙うにあたっては衝突せずに走り切ることが前提になります。そもそも、上の画像にもある「衝突せずにクリアする」というサブ目標は8割方のステージに設定されているため、ちゃんとメダルを取得していくためには無衝突、ノーミスは避けられない壁になってくるわけですね(ちなみに、救済措置として3回まで衝突してもサブ目標にカウントされない車両もあります)。

ここが電車アタックの肝の一つだと思っています。前述の通りコースを何度も走り一つずつ目標を達成すれば金メダルは取れるでしょう。ただ、ゲーマーが、電車アタッカーが一切トリックをせずにミスだけしないように走りきる、そんな走り方をするでしょうか?やはり人間なるべく「ついで」でいろんなことを一気に済ませたくなるもの。そのため、一気に複数の目標を達成しようとして、自ら難易度を上げて走るという人間の特性を考えた巧みな設計だと感じます。

あとはたまにサブ目標の翻訳がわかりづらいことがあり、走りながらこれか!?となることも稀にあります。コースを見る前に翻訳だけしなければいけなかったのかもしれません。ただ、本編のストーリーの翻訳は完璧なのでご安心ください。

実際のところ、僕は1回目のランでそこそこの目標を達成しつつゴールし、2回目は全ての目標を達成してゴールするという形でプレイしており、毎ステージ金メダルを取ってストーリーを進めていました。そのため、2回目のランでノーミスにチャレンジするので勝手に結構ストレスを感じていました(笑)。幸い残機という概念はなく、簡単にやり直しが行える設計ではありますが、自分なりの進め方を見つけてプレイしてください。ただ、このプレイ方法は新しいギミックに慣れていくのには良く、新地方、新ギミックが登場した時最初はかなり面食らうのですが、ステージごとにコンプしていくと大体2ステージクリアした頃には大分使いこなせるようになっていきます。

マニュアルを絡めた絶妙なリスク・リターンのゲーム性

これで電車アタックの基本的なシステムは説明できたかと思います。マニュアルを絡めてコンボを繋ぎ、隙あらばトリックを決めてスコアを稼いでいく。その中でリスクを取れば取るほどスコアが稼げるというゲーム性が、上手くゲーマー、電車アタッカーの性を突いています。

コンボとマニュアルがどれくらい大事なのかを実際のプレイで見てみましょう。僕の好きな曲の一つPassing Ariake Breezeが流れる1-4-2で、マニュアルを一切しないランとマニュアルを使ったランのスコアを比較してみます(全く同じルート・トリックをしているわけではないので、厳密な比較にはならないことはご了承ください)。

マニュアルを一切せずに走る場合のスコア。10万点を超えるのは難しい

コンボを繋がないと69,298点。これでもスコアの星3は取れますが、あまり高い得点とは言えません。一方、マニュアルでコンボを繋げた場合はというと…

マニュアルでコンボを繋いだ場合のスコア。圧倒的に高くなる

445,335点、一目瞭然ですね。このランでは最終77コンボ繋いでいたため、基礎スコアに8倍されていることになります。そのため、このゲームでマニュアルを使わずに走るのはありえない、と言い切ることができるわけです。そしてこのマニュアルにさまざまなリスクが付き纏ってきます。まずは一覧にしてみましょう。

  1. シンプルに左スティックの操作が煩雑になる
  2. マニュアルが解除されないよう自発的にジャンプしてトリックをする必要がある
  3. エフェクトで画面の視認性が落ちる
  4. 一度のミスでスコアが帳消しになる

最初に、シンプルに着地時にスティックを前後どちらかに倒す必要があるため左スティックの操作が少し忙しくなります。実際のところ倒すのは着地の瞬間だけで良くそのあとは離しても良いのですが、自分は混乱してしまうため倒しっぱなしにしていました。矯正できれば多少は楽できると思いますが、一度でも普通の着地をしてしまうとコンボが途切れるため移動時以外はなるべく倒しておいた方が安全というのもあり、かなり左スティックが混乱する原因になります。

次に、マニュアルは着地後の持続時間が決まっており、線路を走っていると一定時間で解除されてしまいます。ダッシュボードやドリフトでの加速で持続時間はリセットされるものの、長い直線では(スコアを稼ぐためにも)自発的にジャンプしてトリックを決め、マニュアルとコンボを繋ぐ必要があります。もちろんそうすると普通に走っている時よりも障害物を避けづらくなります。また、電車アタッカーの性としてちょっとでもコンボを稼ぐために直線があるたびにジャンプしてトリックを決めるようになるため、すぐ先にカーブがあるのにそれを飛び越してしまったり、あるいはジャンプ台を踏み損ねて衝突するリスクが増します。ただ、救済措置もありコースアウトしそうになったら空中ストンプすればなんとかなることが多いです。今回のケース以外にも、操作に混乱してカーブで左トリガーのブレーキではなく右トリガーのジャンプをしてしまう、というミスもたまに起きますがそれも空中ストンプでカバーできるため、いかにすぐ空中ストンプでリカバーできるかというのも実力の一つですね。

3つ目は視認性です。マニュアルは電車の前ないし後ろを浮かせるわけですが、特にカーブでドリフトした直後に加速エフェクトがつき若干カメラが寄るためその先の障害物が見づらくなります。同じカーブではありませんが見比べてみましょう。

マニュアルをしていない状態でのドリフト後の加速。画面の占有率は低い

バックマニュアルをしている時のドリフト後。線路の先がかなり見づらい

フロントマニュアルをしている時のドリフト後。背面の圧迫感がすごい

ちょっと違うパートなので正確な比較ではありませんが、マニュアルをしているとかなり線路の先が見えづらくなってますね。カーブのすぐ先に障害物が置かれていることは非常に多いため、個々の状況判断のしづらさもリスクになっています。一応、この先にある障害物やカーブなどは標識を画面中央上に出してくれるので、そこを周辺視野で確認するのも大事ですね。

走っている先のカーブや行き止まりはちゃんと標識が出る

最後に、コンボにおけるスコア獲得の仕様について。こちらの画像を見てみてください。

ゴール寸前の画像。コンボが積み重なっているがスコア自体は0

先ほどの1-4-2のゴール寸前の画像ですが、コンボ数と基礎スコアの上の現在のスコアは000 000。そう、このゲームは「コンボが終わって初めて点数が加算される」という仕組みなので、自らマニュアルを解除するかゴールしないことにはこのスコアを得ることはできません。これが本当によくできた仕様で、どれだけコンボを繋いでも終盤でミスったら0点から再開、今までの努力は無かったことになります。なので結局ハイスコアを出す=ノーミスが前提なわけですね。

ということで、スコアのためにとにかくコンボを繋げたい一方で、繋げれば繋げるほどリスクが高まっていくわけです。他にもリスクリターンに関連した仕様として、そもそも点数が高いマスタートリックはモーション的にも指の動き的にも時間を取るためジャンプ中に出しきれないリスクが高まります。そして、線路に着地する際には「直前にトリックをフィニッシュすると追加点」逆に「着地時にトリック中だと着地失敗で今回のトリックを取り消し」という仕様もあり、空中でなるべく2つ3つトリックを繋げたいものの、欲張りすぎると着地に失敗してそもそもトリックが成立しなくなってしまいます。幸い着地に失敗してもその時のトリックが無かったことになるだけでコンボは途切れません。せめてもの温情ですね。また、グラインドレールなど一部のギミックに着地する際はトリック中でも成立判定になるようです。

着地に失敗した時はこのような表示になり、今回行ったトリックのチェインが無かったことになる

このような感じで、他の細かい要素もまだまだありますが電車アタックは巧みにリスクリターンのバランスを取っています。桜井さんの動画にもありましたがリスクリターンはゲーム性の基本。そこがうまくいっている電車アタック、面白いに決まっていますよね。

リスクを取る理由として、もちろんハイスコアを狙いたいというのもありますが、シンプルにトリックを決めるのが気持ちいいんですよね。昨今では快楽物質がどうのと言われますが、やはりゲーマーたるものいろんなところで気持ちよくなりたいもの。その本能的な部分をうまいこと落とし込んでいます。

ボスステージがちゃんと面白い

忘れるところだった。そう、このステージちゃんとボスステージが面白いんです。僕がこのゲームが似ているといったソニックやJSRシリーズは、正直ボス戦はあんまりおもろくないです。これ系のアクションゲームでありがちなのが、大体ボスのギミックに対応しながら3–10発殴って終わり。大きめのボスやラスボスならHP半分で行動が変わったり、形態変化があったりといったところでしょう。

ただ、電車アタックはボス戦が本当に面白い!ボスはそれぞれ特徴的なメカや能力を持っており、それに対応して戦うのですが、どのボスにも2, 3回くらい形態変化がありますし倒し方も全部違います。ボス戦がしっかり作り込まれていて楽しいのはこのゲームが傑作たる要因の一つだと思います。そして、ボス戦にも容赦なく衝突なしのサブ目標があり、これもなかなかスリルがあって面白い。ラスト2ステージもこれまでのゲームの集大成、ご褒美的な感じになっているのもいい。徹頭徹尾コースが良いです。

音楽

最後に音楽です。長沼さんの作曲はないもののこのゲーム、世界観やゲーム性だけでなく音楽も異様に充実しており、サウンドトラックはなんと合計80曲。そう、あろうことか全ステージ個別の曲が用意されています。そんなことがありえるのか?

メインコンポーザーはTee Lopes氏、Andrew One氏、Sean Bialo氏。僕は恥ずかしながら存じていなかったのですが、Tee Lopes氏はソニックマニア以降のソニックシリーズに曲を提供しており、なんとも軽快でノリの良い音作りが最高です。他のお二人はインディーゲームを中心に曲を提供されているっぽいですね。そして他にもゲストコンポーザーとして最初に名前をあげた2 Mello氏や、日本のアーティスト・コンポーザーも曲を提供して電車アタックのサウンドが作られています。

全体の音作りの印象としては、街をマイペースに回遊するJSRやBRCの音作りとは少し違い、コース制の疾走感、爽快感、アドベンチャーな感覚というか、そういった印象が強いです。そういった方向性がソニックの曲を手がけるTee Lopes氏の曲調と非常にマッチしていてとてもノれますね。尚且つ、全曲ステージに合わせて書き下ろされており(多分)ステージにあった曲調となっているのも素晴らしく、曲名にもそれが現れています。2 Mello氏のややダークな曲調は物語の後半に固まっているのも良い配分だなと感じます。また、歌詞付きの曲があるのもJSR、JSRFっぽい(こじつけすぎか?)。ただ、いくらかJSRやBRCを意識した音作りにはなっているとは思っていて、BRCに曲を提供している2 Mello氏やJSRに曲を提供しているRichard Jacques氏もいるし、ボーナストラックのStill Playing?の最後のサンプリング音声はJSRFのShape the Futureっぽいし…。

そしてゲストコンポーザーも非常に力が入っており、おそらくいくつかの地方のボスステージの曲には日本の著名コンポーザーを採用しています。例えばアトラスのペルソナシリーズで有名な目黒将司氏はSet for Destructionというペルソナ3のMass Destructionのアレンジ的な曲を提供していたり、元SNK・CAPCOMの藤田晴美氏、元ナムコの高橋コウタ氏、元任天堂でスプラトゥーンの曲などを手掛けている永松亮氏…などなど豪華すぎかいというメンバー。あとは2 Mello氏の楽曲に僕ですら名前を知ってるラッパーのMIYACHI氏がフィーチャリングされてたり。(実際曲を作っているのか原曲を提供だけしてアレンジされているのかは僕の方ではわかりません。そこはすみません!)

僕はコンポーザーには詳しくないため、曲を聴きながらコンポーザーを調べて知っていった感じなのですがコンポーザーの面々もさることながら、やはり曲とステージが最高にマッチしているのがとても気持ちいいです。自分の好きな曲ベスト3を挙げろと言われたらかなり難しいですね。頭から挙げていってもPassing Ariake Breeze, I Like the Way, Trick Terminal, Mikan Kingdom, Take Me Higher, The Tyhpoon of Chugoku, Gozan No Okuribi, A Legend in the Making, Set for Destruction, Riot Academy, Chasing the Voice, Ride with Me, On My Track, Densha ni notte ne!などなど……正直挙げきれません。これでも結構絞ったんです。頑張って選ぶならPassing Ariake Breeze, Mikan Kingdom, On My Trackかな?

正直ゲームやらなくても曲だけでも聴いてほしいです。いやゲームもやってほしい。やってください。

おわりに

ということで電車アタックの紹介でした。2026年、いやここ5年みても僕の中では相当ハマった傑作です。キャラとストーリー含めた世界観、ゲーム性、音楽、全てが完璧に噛み合わさっていてどれも素晴らしい。改めてになりますが、2400円ちょっとと非常にリーズナブルな上、各プラットフォームで展開されており遊びやすいのでぜひ触ってみてください。クリアした人向けにネタバレ込みの感想も書きたいですね。

ちなみに、リーダーボード機能もありスコア、タイム、ゴールドタイムスコアの3部門で各ステージごとに競うことができるのでやり込み勢も楽しめますよ。僕の最高位はサブ目標の関係で結構やりこんだ7-5-1のゴールドタイムスコアで19位でした。

自分の中で一番ランキングが良いコース。世界中の人が参加している

それでは、みなさん良い電車アタックを!

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