1月の読書感想: プロジェクト・ヘイル・メアリー(上下巻・途中からネタバレあり)

ブログが新しくなりました

記事に入る前に少しだけ。この度ブログを新しくしました。このmskand.dogはwolphtype.comから棲み分け、書体に限らない個人の作品・仕事とブログをメインに動かしていきたいと思っています。本当はWorks含め全てを終えてから公開したかったのですが、そうするとなかなか時間がかかりそうで、かつ前のサイトはHTML直打ちで作っている以上ブログもHTML直打ちで。それが面倒だったのもありブログの更新が滞りがちだったので、早くMarkdownでブログを書きたいという思いでとりあえずブログだけ移して公開することにしました。改めてサイトのことに関しては本公開後書きたいと思っています。ブログのレイアウトに関してはまだお試し中というところなので、ご意見ご感想などあればください。

プロジェクト・ヘイル・メアリー

はじめに

年初のリストに月に一冊本を読むという目標を入れたので、どうせならそれらの感想も記事にしていきたいと思う。てっきり1月の感想はデザインの入口と出口か、作文技術になるかと思っていたのだが、月末に食い込んできたのがこの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』である。なお、デザインの入口と出口もその後読み終えてはいる。

最初この本を知ったきっかけはニュース!オモコロウォッチというオモコロの何人かのメンバーのラジオだった。読了後にTwitter内のフォロー内検索をした際にいろんな人が読後感想をあげていたので、本のタイトル自体は目にはしていたのだろうが、はっきりと意識し始めたのは少なくともラジオだと思う。とはいっても、すぐに読み始めたわけではなく、近年は小説を読む習慣もなくなっていた自分は手を取らなかった。その後、映画が公開されるということで予告編が流れ始め、そして原作読了勢から「予告編は見ない方がいい」「何も見ずに原作を読んでほしい」というポストが散見されるようになった。そんな折、レディング時代の友人が結婚するということでインドに行くことになって。いつも飛行機で時間を潰す際は漫画や動画、ゲームなどをいくつか持ち込んでいるのだが、ちょうどいい機会だと思いプロジェクト・ヘイル・メアリーをKindleに入れるだけ入れて、飛行機に乗り込むことにした。Kindleに読み終えていないデザインの本とかはまだあったけど、そういった系統の本はあまり飛行機で読みたいものではないのもあるし。

匿名ラジオの500分ラジオなど、他のコンテンツもあって読み始めたのはインドに到着する少し前だったのだが、一気に内容に引き込まれてしまった。買ってから知ったけれど著者は何年か前の映画『オデッセイ』(原題:火星の人)の著者でもあるという。自分はあまり映画を見にいく方ではないが、オデッセイは確か友人と見たんだったか飛行機で見たんだったか忘れたが、とても面白かった思い出はあるので、当然の引き込み力といえる。その後も続きが気になって仕方なく、インドについてからも友達の家に泊まらせていただきながら、自分の時間をほぼ全てプロジェクト・ヘイル・メアリーに充ててしまった。1時近くまで夜更かししてしまうこともあった。結果として渡航の日と次の日の2日で上下巻を全て読み切ってしまった。

飛行機から撮ったインド

読後感想(ネタバレなし)

ネタバレなしで語るのはなかなか難しいのだが、とりあえず。100点満点中300点。面白すぎる。引き込まれる。なお、読み終わってからいつの間にか一ヶ月くらい経ってしまったので、記憶がやや曖昧なのは許してほしい。

SFは中学生の頃星新一を読んでいたくらいで、あまり読み慣れてはいなかったし、星新一のSFはきっちり技術というよりどこかの近未来という印象だが、プロジェクト・ヘイル・メアリーはより現代的なSF。科学的や物理の内容も少し入ってくるのだが、正直全く難しくはない。というか、理解できなくてもいい。中学理科くらいの知識でざっくり危ないんだな〜とかちょっと普通じゃないんだな〜ということが伝わればいい、そういうふうに書かれている。これはまたもオモコロで申し訳ないが、みくのしんさんが第一章を読む記事でも改めて感じた。

小説にせよ映画にせよ、ゲームにせよ良い作品に触れたとき、自分は口調や考え方が数日その世界に影響される。主人公のようなモノローグを出しながら、現実を見て、フィクションの世界と現実を照らし合わせながら日々を進めていく。この作品もそうだった。読み終わった後、僕は主人公の気持ちを思いながら、インドの天井を見上げ逡巡していた。

そして、主人公の性格というか、程よい有能さと親しみやすさのデザインが完璧。作中他に出てくる人物のような圧倒的に優秀で冷徹というわけでもなく、「早く〇〇しろよォ〜!」と思わされるほどノロマでもない。行動力がすごく、常に観察と実践を繰り返しながら、解決の糸口を探っている。そして小粋にジョークなんかを言ったりしていてユーモアもある。かと思ったら自分が発したユーモアから分析を始める……常に読者の一歩先を行ってくれる賢さと行動力で、自分を引っ張ってくれるような感覚がある。特に本は本人のモノローグで進むし、描写も文章でしか明かされないからこちらも想像力を掻き立てられるのも、感情や状況に移入できる良いポイントだ。逆に映画だとどう見えるか気になるところだが。

これはまあネタバレというレベルでもないので書いてしまうが、この物語は現在と回想を繰り返しながら進んでいく。現在の方は大きな問題に向かって解決に進み、そして何がしかトラブルが起きるの繰り返しなのだが、そこに回想が挟まることで単調さがなくなり、常に次へ次へと読みたくなる構造になっている。特に回想に関しては、最初は少し読むのが面倒にも感じていたのだが(早く現在の部分を読ませてくれ!という気持ち)、徐々に回想も面白くなっていき、最終盤にはもう止められない。ただただ面白い。それしか言えない。

予告編に関しては、まあ自分もやはり見てほしくはないなと思う。映画を見るにせよ小説を読むにせよ、初見で読んでほしい。全てが手探りの状態で、少しずついろいろなことが明らかになっていく過程を主人公とともに体感してほしい。オモコロの記事では「フルコースの内容を先に知ってしまうだけで、フルコースの味自体が落ちるわけではない」という説明をされていて、それは的確な表現だと思ったが、やっぱり読んだ人はみんなそのメニューを初見で見て驚いてほしいと感じていることだろう。

ネタバレなしだとこんなところだろうか。とりあえず読んで/見てみてほしいです。楽しんで。

読後感想(ネタバレあり)

好きに喋りますよ!!大丈夫ですか!!!

やはり一番驚かされたのはエンディングだろう。記憶が曖昧だが、終盤、タウメーバを発見して、養殖して、ロッキーと別れそれぞれの故郷に帰って惑星を救おう……という、大団円に行きそうなところでキセノナイトを貫通するトラブルが起きて。それだけでも驚きなのだが、持ち前の分析力でグレースが問題を解き明かした後、ロッキーもそうなってるんじゃないか、とグレースが思い返した時には完全に自分もグレースと同じ絶望を味わっていた。そしてロッキーを救って、一度ロッキーの星に行ってから、僕は俗世的に地球に帰ると思っていた。地球に帰って英雄と称えられ、ストラットに一言言ってスカッとするのかなと(本人も一言言ってやると言ってたし)。

ただ、彼はロッキーの星に残って、親友の元、教育者としての道を歩き続ける道を選んだ。確かに、地球は救えたし、地球に戻っても担ぎ上げられて事件以前のように教育者を続けていくことはできないだろう。そしてロッキー以上の親友もいないだろう。だから彼は親友がいて、教える子もいる場所で死ぬことを選ぶというのが、何とも驚きというか、マジかと。僕はグレースではないし、日本が恋しくなってしまうような人間だから絶対取れない選択なんだけど、驚きと同時に納得があった。

あと、回想編の構成もいい。ネタバレなしの方でも述べたとおり、現在の方は前へ前へと進んでいくのに対して、回想の最初の方は幾分か退屈だ。最初は主人公の素性がわかるという点で現代にフィードバックされて面白くはあるのだが、途中はこれがどう繋がってくるのだろうと思っていた。そこからの最後の急展開といったら。徐々にわかってきて、ああ、グレースが飛行士に正義感から立候補するのかと思いきや、彼は自分には無理ですと、嫌ですとはっきり言う。そしてストラットが彼を監禁してまで乗せることを決めたことを察した時、おお!と思った。またこの小説は、自分の予想を超えてきてくれた。そのことへの感謝や嬉しさがあった。

ロッキーとの出会いに関しても、出てくることすら全く知らなかったので、非常に新鮮に楽しむことができた。トンネルがつながり、異質な素材の中、かろうじてコミュニケーションをとっていく。この時のグレースの行動力や頭の良さは流石だと感じる。俺には無理。あの未知との遭遇だけで、初見で読んだ甲斐があった。そして、そこから急展開で仲良くなっていくのも面白い。未知を未知のままかろうじてのコミュニケーションをとる感じにしておくのではなく、それぞれ使命を背負った仲間になっていく過程。バディになっていく感覚。それぞれ世界の見方は違うのに、言葉さえ通じれば仲良くなっていける。言葉の偉大さ。これは、自分が英語を勉強して留学し、いろんな国の人と繋がった時との感覚とも近いかもしれない。

終わりに

残念ながら読んでから時間が経ってしまったのもあり、多分もっと色々あるけれど、覚えているところではこんなところだろう。ただただ面白かった。こんなにむしゃぶりつくように小説を読んだことがあっただろうか。漫画だとたまにあるけど。素晴らしい作品に出会えるのは本当に嬉しいことだ。

自分の語彙を増やしたいので、これからも小説を読んでいきたいと思っている。SF、SF以外限らず、面白い本があったらぜひおすすめしてください。そして、ブログの更新も増やしていこうと思います。それでは!

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