2月の読書感想: デザインの入口と出口 デザインの設計と実装をめぐるダイアローグ(有馬トモユキ)

読書感想

はじめに

  • 今月も読書感想を書いていこうと思う。(本のリンク
  • が、読書感想を書くにあたっては、文章を綴るよりもCosense(いまだにScrapboxとどっちで呼べばいいのか安定していない)のような箇条書きっぽい形式の方がやりやすいと思ったので今回はこの形式で試してみる。
    • どうしても文章にしようとすると文同士を綺麗に繋げなければならなくなるが、そのカロリーは案外高い。
    • そして、追加で書きたいときもこの形式ならばこのように一段レベルを下げて書けばいい。
  • 年末から読み始めて、寝る前とかに1人、2人程度の対話を読み進めていたが、忙しい時期(といっても理由はゲームだが)だったのもあり時間を取れない日が続いて長引いてしまった。
    • 3月の頭から日本に戻る予定があったが、物理の本を持っていくのは重量的にも容積的にも避けたかったので急いで読み切ったというのもある。
    • やはり海外在住者としては電子書籍として出てくれたら嬉しくはある。
    • 読み終えたのは3月の頭だが、3月にもう一冊読んだので2月扱いということで。
  • 15人のデザイナーとの対話集が記録されている。一人当たりの内容は密度が高くも長すぎない程度なので、一日一人くらいのペースで読み進めていけば順調に読み終えられるだろう。
  • 初めは編集者の室賀さんからティップスをテーマにするのはどうか、という会話があったと後書きにあるのだが、今有馬さんがティップス集て、という気持ちと今有馬さんと室賀さんがティップス集を作ったら一体どんな内容になるんだ、という両方の気持ちがある。
  • 最終的にデザインへの向き合い方へのティップス集という捉え方は面白いし、確かに気軽に向き合えていいなと思う。

有馬さんについて

  • 全体を通して有馬さんだから書ける、話せる本だなと思った。
  • 前提として有馬さんは知識の量がエグい。自分の5倍、10倍は優にあるだろうといつも話していて感じる。そして、回転や読み出し速度も速い。
  • 話を聞くときはいつも脳内にメモったり実際にググりながら聞くことになるのだが、有馬さんと話した他の人の話を聞いてもそんな感じなので、おそらくみんなそうなんだろう。
    • ただ、自分がNDCのオンスクリーン制作室で働いていたとき、勤務中の雑談において他の先輩方はそんな感じではなかったので、やはり先輩方も通じる知識量を持っていたのだろうか。
  • 同じく話を聞いている時に一生相槌を打つしかないような相手は他に草野さんも思い浮かぶ。2回ほど事務所に伺ってお話しさせていただいたのだが、おそらく僕の発した言葉の90%が「はい」か「うん」、「なるほど」だろう。
    • とはいってもお二人の知識の方向性は異なるような気がしていて、草野さんは数十年、あるいはもっと前から人類に通づる民俗学や身体の部分に、有馬さんは現代の人や作品、テクノロジーに詳しい印象がある。
    • まああくまで印象でしかないし、その方面の話しかしていない可能性も大いにあるが。
  • やや脱線してしまったが、なぜ知識量の話になったかというと、この前日本滞在中にあったある飲み会が原因にある。
  • メンバーは僕、キスケさん、室賀さん、小原くんというなかなか珍しいメンバーで、色々あって機会が生じた。
  • その中で、僕ら世代においてデザインウォッチャーでありデザイン知識人的な小原くんの知識量にはいつも感服しているのだが、その時は室賀さんという受け皿があることで、普段僕では引き出せない彼の持論や私見を聞くことができた。
    • 数年前大学院の卒論を書いているときに読むべき本についての指摘を室賀さんにいただいたのだが、その時から一生本に向き合っている編集者の方々の知識の幅と深さってもの凄いのではと思っている。
  • より深い知識やそれに基づく意見を話し合う際、Aさんが持っている深さが50、Bさんが持っている深さが30だとするとおそらく30までのことしか話せないだろう。少し深めても35くらいだろうか。
  • なので、その飲み会において、僕とキスケさんはそれぞれ異なる範囲にそこそこの知見があるとは思うが、小原くんの深みを室賀さんがいなくては引き出しきれなかっただろうという思う。(人の知見をそこそこと書いてしまうのはどうかと思うけどこの点においては多分同意していただけるはず。)
  • 話を戻すと、この本は単純なフォーマットに沿ったインタビューではなく、あくまでインタビュイーたるゲストとインタビュアーたる有馬さんの「対話」という形式で進んでいく。そして、ゲストはグラフィックデザイナーだけに限らず、幅広い職種・職能を持つデザイナー、あるいはクリエイターの方々である。
  • そしてそれぞれの分野の知識を幅広く持つ有馬さんだからこそ、各人の思考や深みを拾い上げることができるのだと思ったのだ。
  • なんなら、会話が白熱して対話内での有馬さんを表す――の方がゲストより長い箇所もある。
  • それこそ有馬さんがインタビュアーである意義だと思う。自分がインタビュアーならこうはならないだろう。有馬さんの円がデカすぎて、色んな人とのベン図における重なりが大きいとも言えるか。

内容について

  • まず、面白い。さまざまな分野で活躍する人々の思考を垣間見れるだけでいちデザイナーとしてとても嬉しい。
  • 先ほどは有馬さんの知識量によるこの本の特異性について書いたが、そもそものゲストとの繋がり、選においても有馬さんだからこそだろう。
  • 最初が三澤さんなのもつかみとして完璧というか、一気に引き込まれる感覚があった。
  • 全ての対話を総括するのは難しいけど、僕が表現するなら「『定型』ってないよね」ということかもしれない。
  • 対話においてはゲストそれぞれのビギニングや、現在のものづくりの考え方が示されているが、それぞれの経験とそこから生まれるモチベーションや方法論は教科書的ではない独特のものであり、正解のルート(というより不正解のルートの方が適切か)なんてないよ、という感じ。
  • その独自の経験や方法論が、世間一般、大衆の普遍的な感性と共鳴するところがあるからデザインが通じる、受け入れられるのかもしれない。デザインっておもしれー。
  • ちょっとこれ以上語るのは僕の語彙的にも記憶力的にも難しいんだけど、色んなデザイナーの友達と改めて話し合いたくなる本だった。

終わりに

  • この形式で書いていくのはなかなかいいかもしれない。今は日本から(正確には乗り継いだ韓国から)フランスへの飛行機の中で書いているが、ささっと書くことができた。
  • 次の本は今回日本で手に入れた『デザイン対話 再現か表現か』か、ヘイルメアリーの読書感を求めて読んでいる『火星の人』のどちらかかな。
  • このWebサイトも4月中の完成を目指しているので進めていきたい。頑張るぞ。
  • それでは。
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